Why Thinking is Important, Logic.

「思考が大切な理由(わけ)」


思考する
人を殺(あや)めてはいけない。このことは、誰もが知っていることでしょう。それでは、殺人罪が刑法の何条で定められているかを記憶したり、どのような罰則を定めているかを正しく理解してる人は、どの程度いるのでしょうか。

(殺人罪)刑法199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する

この罰則そのものは、単なる情報であり、知識に過ぎません。この行動を抑制するのは、人間の理性が一定の制御をするからです。よって、法や規則などのルールに縛られているからでも、情報であり知識によって、行動が制御されるからではありません。
知識から思考を生む
人は仕事や生活の中で、自分は考えていると思い込んで(錯覚して)います。情報を集めて、分析や加工はしていても(知識にしていても)、自らの頭で思考してる人は少ないものです。何のために何を優先すべきなのか、基準や前提条件を定めないまま、過去の習慣、価値観や成功事例をそのまま模倣(真似)しています。多くの人は仕事や生活の大半を、知識と思考の境界線を不透明にしたまま、実際は知識によって行動を制御することが多いのです。

「人を殺(あや)めては家族や友人が悲しみます。ましてや情状酌量の余地がないと判断されれば、極刑になることもあります」、この文章の中には、客観的な事実である知識を並べたてるだけで、自らの考えや意見は1つもありません。「極刑を覚悟してまでもそうしたいのならば、残念ですがそれもひとつの選択です」、これは、簡単ですが自らの思考が生み出した意見です。最愛の娘を亡くされた両親の感情を思ひ量り、知識を合わせることで、このような簡単な意見を、思考から生み出すことができます。

思考とは知識を並べ立てることではなく、ある事実や知識をもとに意見や結論を導き出すことであり、考えることです。それには事実や知識に対して「なぜ、どうして?」と疑問を持ち、自分に繰り返し質問する。そして「なぜならば、」と、その理由となる自らが思考した意見を述べる。このような思考する癖を身につけること、そして続けることが大切です。
思考が価値を生む
情報を集めてデータベースにすれば、とても利便性の高い知識データベースになります。しかし比較的簡単に情報が手に入るネット社会(人のつながりも含めた広義な情報ネットワーク社会)では、価値を生む情報源にはなっても、情報または知識そのものの価値は、低くなっています。

日本人ばかりで、興味や関心も同じ方向性の人々が集まり、地元や親元から通っては均質な人脈しか築けない日本の学生。国籍や興味、関心の多様な人々が集まり、寮生活やホームステイを通じて多様な人脈を築ける海外の学生。

みんなが同じ方向を目指すことが良しとされ、褒められること、認められることや正しいことが求められ、失敗を恐れて主張することに躊躇(ちゅうちょ)する。数の論理によって答えが誘導され、多数派(マジョリティ)がはびこる。日本にはそんな画一性を求める傾向や社会偏重が、まだまだ潜在的には根強く残っています。

もっと人それぞれの考えや意見、価値観が尊重されて良いのでは、そのように感じます。そんな多様性(ダイバーシティ)が積極的に尊重される、成熟した豊かな組織または社会には、個人の意見や考えに基づいた自立性の高い行動が必要になります。画一化され大量に生産する時代から、多様化された個性のある商品が受け入れられる時代になり、思考する能力がこれからの価値や付加価値を生む社会となります。

その人の価値とは人生を経験または体験した年数、情報量や知識の多さではなく、その人の考え方や哲学であり、その魅力がその人自身の価値を生みます。頭が良いだけでは尊敬されず、感性の領域が付加価値となり、感覚(センス)を高めることが一般化(コモディティ化)を回避します。変革(イノベーション)は不確実性のなかに、少数派(マイノリティ)の思考によって生まれる。
[筆者:大谷智史](2013年3月14日)